2010年度 土曜部会報告
参加者6名:河地・大野・野呂・古田・酒巻・川畑・田辺(敬称略)
今回担当した42番歌は紀貫之の大変著名な歌です。 この歌は、詞書に諸本の異同が多くあり、「貫之集」や「百人一首」をはじめとする定家撰の撰集・名歌撰に取られています。 先生方からは、詞書が短いのを特徴とする古今集において、業平に関連していない歌でこれほど長い詞書は稀なこと、そして、貫之の歌について調べる時には、3系統ある「貫之集」のどの本が用いられているかに注意する必要があることをご指導頂きました。 今年度の研究会はこれが最終回です。授業の他にこのような勉強の場があり、とても環境に恵まれたと思っています。来年度も王朝文学文化研究会が充実した勉強の場になりますように。より一層のご発展を祈念しております。
学部4年 田辺ゆかり
12月11日,18日 発表者:川畑 有貴 資料
参加者は河地、田辺、大川、市川、と発表者川畑の計5名でした。(敬称略)
担当箇所は40・41番歌です。 目に見えない梅の花も、その香でどこにあるのか分かってしまうという景を読んだ二首です。 花の香が闇の中を漂うという景は漢詩にも好んで詠まれたそうで資料には『白氏文集』から桐の香が闇に漂うところを詠んだ歌を引きました。 梅の香が香るという歌もあると聞いて探してみたのですが、まだまだ勉強不足で、見つけることができませんでした。和歌を知る上では、漢詩の知識も欠かせないと痛感いたしました。梅の香を詠んだ歌が続きましたが、どうもその香を思い出せません。折しもこれから梅が咲く季節が来ますので、注意してその香りを確かめてみたいと思います。 次回は年明け、1月8日となる予定です。皆様どうかよいお年をお迎えください。
学部二年 川畑有貴
参加者は河地、大野、市川、川端、と発表者大川の計5名でした。(敬称略)
担当箇所は38番歌~39番歌になります。 38番歌の「知る人ぞ知る」の箇所において、伝本によっては「知る人ぞ見る」となっておりますが、「見る」となっているのはいづれも六条家系統の伝本に偏って見受けられます。このことは当時の歌壇の状況がどのような形であったのか非常に興味深いものであり、今後も調べていきたい所です。 尚、本文批判に関しては、池田亀鑑『古典の批判的処置に関する研究』を参考に、読み解くのも面白いと思います。
通信教育部4年 大川 宗之
参加者は河地、野呂、大野、大川、川畑と発表者の市川の6名でした。(敬称略)
発表箇所は36、37番歌でどちらも梅の花を折る歌になっています。36番歌は梅の花を鶯の笠に見立て、それをかざすことで自分の老いを隠そうとした歌で1081番歌を本歌としてふまえています。37番歌はいままで遠くからしか見なかった梅の花を手折って近くで見ることで新たにその素晴らしさに気づいたという内容でした。また、この歌は恋の歌としても解釈でき、非常に興味深い歌でした。
市川 直人
参加者は、河地、大野、大川、小関、川畑、市川と発表者野呂の7名(敬称略)。
32番歌から始まる梅歌群の冒頭、題知らず、読み人知らずの四首の後半の二首を読解しました。34番歌、35番歌ともに、恋の感情を詠み込みつつ、梅の香を讃美していますが、34番歌は、梅の香を恋しい男の薫香を誤る女の歌、35番歌は、梅の移り香を女、の移り香と疑われる男の歌で、対応が見出せます。32番歌からの四首は、共通する語句によって連続性でをもたせつつ、二首ごとに対応させており、大変に考えられた配列と言えるでしょう。『万葉集』には少ない梅の香を詠んだ歌が梅歌群冒頭に配されており、『古今集』時代の嗅覚を重視した美意識がうかがえます。11月20日は日本文学文化学会研究集会のためお休みです。次回は11月27日、35番歌からになります。
野呂 香
参加者は、河地、野呂、大野、大川、酒巻、鈴木、市川、(敬称略)と発表者川畑の計8名でした。
担当箇所は32、33番歌です。32番歌では鳥歌群からのつづきで鶯が、梅歌群の始発として梅の花が詠まれています。 よみ人しらずですが、他出として歌仙家集には伊勢の作と記されています。「ありとやここに」という印象的な倒置句がありますが、この句は中世以降いくつかの歌に例を見ることができました。古今集がやはり後世の歌人にとって模範的な存在であったことを思わせます。 32番歌で梅の香が袖に移ったと詠んでいるのに対し、33番歌では袖の香が梅の花に移ったと詠まれています。 ちょうど逆の発想になっている二首を意識した配列と言えるでしょう。報告が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。
学部二年 川畑有貴
参加者8名(河地、野呂、大野、石澤、田辺、大川、川畑、酒巻)
30、31番歌を発表。配列としては、「鳥歌群」の中の「帰る雁(春)」に相当する。『萬葉』では「帰る雁」ほとんど歌われない点に注目すべきだろう(発表資料参照)。また、甲南女子大で発見された古今集の写本についても話題として取り上げた。次は32番歌から。10月30日は学祭でお休み、11月6日の開催となる。
河地 修
参加者は田辺、川畑、大川、市川、酒巻、鈴木松江(新入会)、大野の7名。(敬称略)
今回は、急遽内容を変更し、「和歌披講」について説明、実習をした。現在、宮中で1月に行われている「歌会始(うたかいはじめ)」において、和歌を披露するときの伝統的な歌い方を「披講」と呼ぶ。まず句ごとに切りながら歌を読み上げ、その後、「甲調」あるいは「乙調」という節をつけて、もう一度歌を繰り返して歌う。今日、和歌は目で読むことがほとんどだが、古くは声に出して歌われていた。実際、声に出して歌を歌うことで、和歌の響きや印象が異なってくることがある。突然のことで戸惑っていた参加者もいたと思うが、「甲調」の歌い方を一通り終えることができた。
大野
参加者は河地、野呂、田辺、川畑、と発表者大川の計5名でした。(敬称略) 担当箇所は27番歌~29番歌になります。
この箇所は特に難解な語句などはないのですが、28、29番歌に「百千鳥」「呼子鳥」という古今伝授における三鳥における二鳥がたてつづけにでてくる所に特徴があります。部会においては、その後の『古今集』における享受をお話しましたが、野呂先生の指摘で古今伝授とは、その語句の解釈に意味はなく、その伝授をうけた者、すなはち古今伝授を知っていることが権力の象徴であるとおっしゃっておられて、あらためて当時の『古今集』の権威のありようを見直されるものだと思いました。まだ、三鳥のうちの「稲負鳥」も残っておりますので、機会があれば担当したいと思います。
通信教育部4年 大川 宗之