源氏物語小屏風絵‐胡蝶‐

上:『源氏物語』の「胡蝶」巻で、紫の上は、秋好む中宮の「季の御読経」の催事に際して供華を行ったが、その時の使者として遣わされたのが、「迦陵頻」と「胡蝶」を舞う童子たちであった。庭の舞を見る画面奥の秋好む中宮と光源氏、春爛漫の六条院、西南の町である。

源氏物語小屏風絵-胡蝶-
(個人蔵、江戸初期)

下:「龍頭鷁首を、唐のよそひに、ことことしうしつらひて、楫取の棹さす童べ、皆みづら結ひて、唐土だたせて、さる大きなる池のなかにさし出でたれば、まことの見知らぬ国に来たらむここちして」―『源氏物語』「胡蝶」巻より

源氏物語小屏風絵‐胡蝶‐
【特別研究発表会】

 院生会員の古田さんが博士論文から『源氏物語』の侍女と『落窪物語』のあこきとの関係性についての研究発表、河地先生が国宝源氏物語絵巻(宿木巻)についての発表を行いました。
 また、研究会の後の懇親会には14名が参加し、古田さんの一層のご活躍と王朝研の発展を祈念して賑やかに平成23年度の研究会の活動の締めることができました。ご参加下さいました皆さま、ありがとうございました。


◆2012年3月10日(土) 白山6号館 6304教室
1、15時30分~17時00分
 「平安文学における侍女の研究」
  平成23年度博士学位請求論文(2月22日審査終了、同24日正式承認済み)
  大学院国文学専攻博士後期課程 古田正幸
2、17時10分~18時00分
 「国宝源氏物語絵巻の文化史的考察」
  日本文文学文化学科教授 河地修
※懇親会 18時30分~21時 やるき茶屋 巣鴨店


 

 今回の発表は、古田正幸氏が東洋大学に提出された博士学位請求論文の一部です。
 古田氏は、『平安文学における侍女の研究』として、第1部「侍女に関する表現」、第2部「侍女による後見の諸相」、第3部「作り物語における乳母の役割」の構成で博士論文を執筆、審査の結果、博士号が授与されたものです。
 今回、発表された箇所は、第2部「侍女による後見の諸相」のうちの、第2章「紫の上の後見・少納言の乳母―『落窪物語』の「あこき」との関係性を中心に―」の部分をまとめられたものです。『落窪物語』と『源氏物語』との影響関係については、決定的な根拠となるものが少ない中、古くからその可能性については言及されていますが、なかなかその認定には困難を伴うものがあります。今回、古田氏は、「乳母」の観点からこの問題に取り組まれたわけで、源氏物語研究に一石を投じたものとなりました。
 今後も、幅広く、研究成果を公表していかれることになると思います。ますますの研究の発展をお祈りします。  (河地)

 

 今回の発表会の二部は河地先生が「国宝源氏物語絵巻の文化史的考察」として、 国宝源氏物語絵巻の宿木巻から有職故実について解説してくださいました。
 畳の縁でどんな身分の人が座しているかわかるという点が興味深かったです。この絵の畳の縁は繧繝縁と高麗縁の二種類が描かれていて、場面は帝と薫が碁を打っているところですが、高麗縁の畳の上に繧繝縁の畳が置いてあるところからどちらが帝かわかるということでした。繧繝縁の畳は天皇など身分の高い人に用いられたものなので、現代でももちろん身近なものではありませんが、雛壇飾りなどに使われていているとのことで庶民文化に反映されていることが面白く、また、源氏物語絵巻に描かれている調度品ひとつとっても奥が深いので、見方一つで世界が広がる楽しさを改めて感じました。このような研究発表会や勉強会をまた企画して下さると嬉しく思っております。  (石澤)